新婚の定義──嘘つきな君と僕──
好きな人の好きなところ
ライブが終わった後、誰もいなくなった客席から、レナはステージを眺めていた。

(お客さんはこういうふうに見てるんだ…。)

誰もいなくなったステージに向かってシャッターを切ると、座席に静かに腰掛けた。

(仕事とは言え、一番前の席のお客さんよりも近いところで、ステージの上のユウを見られるんだから…カメラマンで良かったかも…。)

ポケットからユウのピックを取り出し、手のひらに乗せて眺めると、レナは今日のライブでのユウを思い出して、嬉しそうに微笑んだ。

あの時レナは、レナに向かってピックを投げて笑ったユウにドキッとした。

どこにいたって、レナがユウにとっての特別な存在だと言ってもらったようで嬉しかった。

(昔はずっと一緒にいても当たり前みたいに思ってたのに、今になってこんなにドキドキするなんて…。一緒に暮らし始めて1年以上経つのに、ユウには私のまだ知らない顔がたくさんあるのかも…。ユウ、あんなふうに笑うんだもん…カッコ良すぎでしょ…。)

一緒にいるほど、ユウをどんどん好きになる。

ユウが笑うとレナも嬉しくて笑顔になるし、ユウが抱きしめてくれると安心する。

(甘えられるとつい許しちゃうし、ユウに求められると…やっぱり嬉しい…。私ってユウには弱いな…。こういう気持ちって、ずっと続くのかな?)

レナは少し照れ笑いを浮かべて、ユウのピックをまたポケットにしまって席を立った。


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