シンデレラに恋のカクテル・マジック
第十二章 プリンスの企み
 菜々は初めて会った叔母とすっかり打ち解けて、叔母の提案で場所をカフェに移してからも、つい話し込んでしまった。連絡先を交換して祖父の屋敷に戻ったときには、もう午後六時近かった。

(遅いって怒られるかな……。や、夏の六時はまだ明るいし、まだ夕方だって言い張れば大丈夫……かな……?)

 ビクビクしながらインターホンを押したが、応答したのは当然祖父ではなく、お手伝いの吉村だった。お腹の前で手を重ね、丁寧にお辞儀をする。相変わらずドラマの中でのようなお出迎えだ。

「お帰りなさいませ、お嬢様」
「た、ただいまでございます」

 それが正しい挨拶なのかはわからないが、ついしゃちほこばってお辞儀を返した。菜々が顔を上げたとき、吉村が無表情で言う。

「良介様は来客中です。夕食の時間まで部屋で待つように、とのことです」
「わかりました。ありがとうございます」

 言われた通り大人しく部屋にいようと、菜々はゲストルームに戻った。ドアを開けたとたん、足が止まる。留守の間に部屋が片付けられたらしく、ベッドもきちんと整えられ、着てきた服もキレイに洗濯されて丁寧に折りたたまれていた。洗面所も当然ピカピカだ。
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