あなたと恋の始め方①
第二章

伝え方の難しさ

「俺は自分の分くらいは払いますよ」


 折戸さんは財布を取り出しながら言うと、高見主任はクスクスと笑いながら折戸さんに向かっていらないと言うように手を軽く振った。


「ついでだからいい」


「じゃ、遠慮なく甘えます。今日に夕飯代に回します」


「そうしろ。日本のもうすぐフランスに帰るのだから、日本食を堪能しとけよ」


「そうですね。やっぱり日本食は最高に美味しいですから。さ、美羽ちゃん。急がないと仕事に遅れてしまうよ」



 私は研究所に、高見主任と折戸さんは静岡支社に向かうために駅に向かう。ここから駅までは歩いてすぐだけど、私の戻る研究所とは全くの逆方向になるので、ここでお別れになる。折戸さんは夜にも合うけど、高見主任はここでお別れになる。同じ会社にいるとはいえ、ほぼ、会うことはない。そう思うと離れがたく感じるけど時間は待ってくれない。



「今日はありがとうございました。高見主任にお会いできて嬉しかったです」


「俺は坂上さんに会えて安心した。研究所は大変だろうけど、これからも頑張るんだよ。今回の研究は注目されているから坂上さんにとっていいステップアップになると思う。研究内容もだけど、坂上さんのことも見ているから頑張って欲しい。期待している」


「はい」


 私がそういうと、高見主任はまた涼やかな笑顔を私に向けた。この笑顔に私は東京にいる時に何度も助けられた。仕事に迷いそうになった時に私を正しい方向に導いてくれたのは高見主任だった。
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