王子の結婚
嫉妬

王宮で与えられていた自室よりは少し狭い
女官用の部屋もないように見える

「少し狭い部屋でごめんね
でも後宮に入るまでの数日だから我慢して」

部屋に設えられている長椅子に座るよう促された
すぐ隣にソウが座る
距離はなく、肩と肩が触れる

「ここだと僕も今までより来られるし、結婚の儀の通いにも近くなる
それにユナを誰の目にも触れさせなくて済むからね」

ユナを覗き込むその顔はどこか妖艶で、急にドキドキと胸が鳴り出す

「もう一度聞くよ?
兄上に何を言われたの?」

目と目が合って、逸らしたいのにそれが許されない
張り詰めた空気が少し怖いくらい

言葉が出ない
何を言えばいいのか分からない


「書庫はね、兄上がよく行く場所だから行かせたくなかったんだ」

ソウから話しはじめた

「もしかして昔の話をされたら…って思って、二人で会わせたくなかった」

昔の話って…

「ソウ王子も私たちが昔会っていたことを知っているのですか!?」

つい、思ったことを口にしてしまい、ハッとするが、もう遅い

「やっぱり聞いたんだね…
兄上と話したこと、ちゃんと聞かせて
誤魔化さないで…」

戸惑いが胸を詰まらせる

ゆっくりとさっきの出来事を話す

「…カイ王子は私たちはまだソウ王子と婚約する前に会っていたと言いました
でも私はよく覚えてなくて…
寂しかった私を抱き締めてくれてたその人のことはうっすらとは記憶にあるんですけど…」

チラッとソウの顔を伺い見る

「続けて」

微笑んでこちらを見てくれているソウに少し安心して先を続ける

「その頃私が話したのか、私の心の寂しさを知っていて
両親からの愛情を求めていた私を愛してあげたいって思ってくれていたって言われました」

ふぅ、と息を吐く気配がする

「それだけじゃ、ないよね?」

確信に満ちたその言葉
もう、隠せなかった

頷いて、少し間を置き、話し出した

「ソウ王子はこの結婚を政として心得ていて、あの頃の母のように上辺でしか私のことを愛さないと
…私もそれはちゃんと心得てますから…」

自分で言っているのに切なくなる
目頭が潤んできそうで、必死に堪えた

「だから自分の妃になれば愛を尽くせる、と
……私のことを愛している、と……」


言ってしまった
こんなこと言ったら、ソウとカイの関係を壊してしまうかも知れないのに

私が彼の言葉を聞いて、あんなところに行かなければ、こんなことにはならなかった
今さらながら、自分の行動に後悔が募る


「嫌なこと言わせてごめんね
ユナが気に病むことは何もないよ
遅かれ早かれ、きっとこうなってた」

ソウの微笑みに影が差す

「真実を話すよ
何故ユナが婚約者として選ばれたのか…」

これは避けられないこと





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