甘やかな螺旋のゆりかご
2・フォックスフェイス
*2・フォックスフェイス*


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二月十三日二十一時。


友チョコと、それを隠れ蓑にした本命を作りたいあたしは、だいぶ前から手伝ってくれる約束をしてたお姉ちゃんとキッチンを占領している。


「ありがと。お姉ちゃん」


「だって、あなたお菓子作ったことないじゃない」


「だってぇ、小さい頃からお姉ちゃんが美味しいの作ってくれるからだもんっ」


七つ歳の離れたお姉ちゃんは、お菓子作りも料理も上手で、物凄く美人。性格も優しくて美人で、ひとつだけある欠陥を除いては完璧だとあたしは思う。恋人がいないこと、あたしの心は常に痛んでいる。


「さあ、口は出すけど手は出さないわよ」


「え~っ。手伝ってくれないの?」


「本命の分があるなら尚更。わたしも自分のを隣で作るから見て技を盗むのもいいわよ」


隠し本命のこと、お姉ちゃんだけは知っている。あたしたち姉妹には恋する相手がそれぞれあって、姉妹だけの秘密だ。


「食べてくれるといいね」


お姉ちゃんは、絶対に告白しろとは急かさない。そうしたほうがいいのかもしれないけど、あたしにはまだ無理。


「お姉ちゃんのも、食べてくれるといいね」


美味しく焼けてと、あたしたちは願いながら、メレンゲを泡立て始めた。


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