落ちる恋あれば拾う恋だってある
あなたと恋が終わるまで
◇◇◇◇◇



「夏帆ちゃんお昼行く?」

丹羽さんがお財布を持ちながら私に声をかけてくれた。

「すみません……もう少ししたら行きます」

「そっか。じゃあ私先行くね」

「はい。いってらっしゃい」

丹羽さんは時間になっても休憩に行かない私に不思議そうな顔をしていたけれど、今日は横山さんの予定に合わせなければいけない。
煮物はもちろん、横山さんのために朝からお弁当作りに力を入れた。
だって惚れたなんて言ってもらったら、どんなに眠くても早く起きて頑張るでしょ。

LINEのメッセージが来た音にスマートフォンを見ると横山さんからの連絡だった。

『遅くなってごめん。あと15分くらいで行けそう』

『じゃあ食堂で待ってます』

私は冷蔵庫からお弁当を二つ出すと食堂に向かった。

混み合っている食堂で隣り合った2席が空いている。
部署が違う人は私と親しくしたいとも思っていないだろうから、先に座ってしまえば私の隣に座ろうと思う人はいない。別に嫌われているわけではないけれど、みんな私とはどこか距離をおく。入社直後からしばらく私には様々な噂が囁かれたし……。

しばらくして横山さんが来た。

「遅くなってごめんね」

横山さんが空いている私の隣に座ったことで周りは意外という目で私たちを見ている。

「どうぞ……」

私は先に電子レンジで温めておいたお弁当を横山さんの前に置いた。

「うわっ、美味しそう。いただきます」

横山さんは一番に煮物を口に入れた。

「うん。やっぱうまい!」

次々と他のおかずも頬張る横山さんを見てほっとする。笑顔で食べてくれることが嬉しい。早起きした甲斐があった。

私たちの様子に食堂にいる他の社員は好奇の眼差しを向けていた。




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