腹黒教師の甘い策略
まだ好きなんだな。

「有沢先生、おはよ!」

「え、あ……、おはよう。」



久しぶりに香織と会って、少しは気が晴れた。

よし、今日からまた張り切って働こう!と、
思ってたのに、どうして朝っぱらからこの子に
会っちゃうんだろ。


元気な声と明るい笑顔で挨拶してきた、
私が今一番見たくない女子生徒。
もとい、浮気相手A。


……私の彼氏とキスした翌日に、
私にそんな良い笑顔で挨拶できるなんて、
悔しいを通り越して関心する。


浮気相手Aは私に挨拶をすると、自分の教室に入り、楽しそうに友達とおしゃべりをしてる。




……10個下の生徒の方が余裕があるって
どういうことなの。
こんなことでダメージ食らってる場合じゃない
こんな時こそ大人の余裕ってやつを見せなきゃ


生徒達のにぎやかな声がする午前8時27分の
保健室前の廊下で、私は一人、心のなかで
そう意気込んだ。



「おはようございます。有沢先生。」


気合いを入れて、保健室のドアを開けようとした時、私の耳に届いた低音ボイス。



……今日は朝からついてない。
立て続けに会いたくない人に会うなんて。


「……おはようございます。谷崎先生。」


背後に居るであろうその低音ボイスの持ち主に
私はわざとらしく笑顔を作り、挨拶を返した。


「そんな嫌そうな顔すんなよ。
ちょっと挨拶しただけなのに、
冷たいなあ、悠姫ちゃんは。」


「なにさらっと名前で呼んでるの!?
変な誤解されるから、ここでそんなこと言わないで!」



私が睨んでも谷崎は何がおもしろいのか、
いつもの嫌な笑みを浮かべてる。

……本当、なに考えてるかわかんないやつ。
まあ、わかりたくもないけど!





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