空と君との間には
8章/君が笑ってくれるなら

1話 今日も冷たい雨が降る

病院に駆けつけた詩乃は、付き添った黒田と紗世に淡々と語る。


「由樹ね、この間の定期検査の結果……あまり良くなかったの。いつ大きな発作が起きてもおかしくないって」


紗世は「あっ」と息を飲む。


「去年くらいから、薬を強めにして、量も増やしてたんだけど……家では、ぐったりして横になってることが多かった。療養を勧められていたのよ」


「そんな……」


「無理をしてるんじゃないって、何度も聞いたんだけど、何も話さなかった……」


「由樹は私たちにも仕事のことも、体調のことも話しませんでした。気づけなくてすみません」

黒田が静かに、頭を下げる。


「由樹は喋れなくなって間もなくから、小説を書いてたわ。万萬詩悠ってペンネームで……受賞の連絡を受けた時、由樹はリハビリ中で、無理をしないようにと思って、嘘をついたわ」


「……詩乃さん」
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