季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
サクラの樹の下にはオバケがいるんだよ
私はマスターからもらった名刺を頼りに、その事務所を訪れていた。

なんのへんてつもない小さなオフィスで、受付の若い女性に出されたお茶をすする。

テーブルを挟んで向き合っているのは、ちょいワルふうのダンディーなおじさん。

年の頃は40代半ばというところだろうか。

大人の男の色気を感じる。


私は佐倉代行サービスの社長だというそのダンディーなおじさんに、マスターに話した内容と同じ話をした。

誰かに話すほど、厳しい現実に突き刺されているようで、どんどん惨めな気持ちになる。

「事情はわかりました。その依頼、お引き受けします。」

「ありがとうございます。」

「それでは細かい設定をしていきましょう。」

佐倉社長は受付の女性に声を掛け、書類らしきものを持って来させた。

私自身の身元や、希望する日にち、設定などの詳細を記入するシートをテーブルの上に差し出される。

二度も話した自分の恥を、文字にまでしなくちゃいけないなんて、余計に惨めだ。

でも、仕方ない。

やると決めたんだから。


私がシートに記入していると、事務所の電話が鳴った。

応対した受付の女性が、子機を持ってきて佐倉社長に渡した。

私は黙々と記入を続ける。


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