君と奏でるノクターン
6章/Some say love it is flower.

1話/Christmas Eve in 横浜

カフェ·モルダウの入り口に下げた風鈴が、けたたましく鳴り響く。

「郁、ビッグニュースだ。周桜がピアニストデビューしたぞ」

安坂貢がいつになく声を張り上げ、忙しなく席に着く。


「えっ!?」


「周桜宗月のコンサートで、アンコールに『ROSE』を弾いて、歓声を全て持っていきやがった」


「……ウソ――」

郁子は言葉が続かない。


「コンサートのヴァイオリン共演者が、急病で周桜が代役を勤めたらしい」


「へぇ~、やるじゃん」

煙草を噴かしていた岩舘理久が、ニマリ口角を上げる。


「共演曲は『懐かしい土地の思い出』と『ラ·カンパネッラ』割れるような歓声が会場の外まで響き渡ったらしい」


「2曲とも、詩月の十八番じゃん。周桜宗月も粋な計らいをしたな」

貢は興奮気味に、音楽雑誌を広げる。
< 180 / 249 >

この作品をシェア

pagetop