似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ7

過去


 電車を乗り継いで1時間半、そんなところに私の実家はある。斗真と2人で最寄駅に降り立った。
 駅前には商店街があるものの、都会に慣れてしまった私にとっては少しさみしいと感じてしまう。

「変わってねぇなぁ……」

 荷物を持ってくれている斗真が辺りを見回して言った。確かに、あまり変わっていないかもしれない。

「行こっか」

 商店街を抜けるとすぐに閑静な住宅街になっている。
 昔から変わらないレンガ調の家があったり、パステルカラーの可愛らしい家があったりして、目に楽しい。
 私は生まれ育ったこの町が好きだった。

「懐かしいなぁ……ああ、この家まだあるんだな」

 斗真も目を細めて変わらない景色を見つめている。

 私はそんな斗真と、少し距離を取って歩いた。

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