セシル ~恋する木星~
第3章 ふたつの美術館とマルシェ


それから、一行はシャガール美術館へと案内される。
高級住宅街にある、緑豊かな静かな場所。オリーブの木の奥に、美術館はあった。

シャガールと言えば、聖書をモチーフにした作品が有名だ。
数百点にも及ぶ作品が展示されており、どれも胸にぐっとくる。

セシルは子どものころ、教会に通っていたので「人類の創造」や「楽園追放」など、なじみのあるものには特に惹きつけられていた。

そして、コンサートホールの壁一面を大きく彩る、シャガール・ブルーの美しいステンドグラス。

椅子に座ってゆったり眺めていると、どんどんブルーの光の中に吸い込まれそうになる。
なぜか涙があふれそうになってくるセシルだった。


ずっとここにいたい。動きたくない……。
それは、魂の願いだったのかもしれない。



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