セシル ~恋する木星~
第9章 パリ最後の夜


しばらくすると、お店に着いた。
山口は予約してくれていたようで、すんなりと奥のテーブルへと案内される。
常連なのかもしれない。

「こうやって、手で持って食べていいんだよ」
カエル料理が運ばれてくると、まず山口が豪快にお手本を見せてくれ、セシルと直子も真似をした。

「美味しーい」
恐る恐る手を伸ばした直子も笑顔になっている。
ニンニクのよく効いた、豆板醤のような辛みのあるソースで、濃い目に味付けされていた。
それがカエルだと言われなかったら、本当にわからない。ビールにもよく合う。

そんなふたりを、山口は目を細めながら楽しそうに見ている。
他の料理もどれも美味しかった。春巻きの皮はパリパリだったし、焼売はふっくらジューシーで、チャーハンもパラパラしていた。



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