私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
◆第7章:都会男との仕事2
 週が明けていつも通りの生活が始まり、藍山駅に着くまで電車の中吊り広告を眺めると、『結婚するならどんな彼?アンケート特集』『僕が彼女と結婚を決めた理由ベスト10!』というフレーズの結婚をテーマとした特集があって、結婚だなんてまだまだって感じだけど、ふと年齢や今の仕事を考えると私はこれからどうしていきたいのだろう。

 今の仕事のやりがいはあるし、いざ結婚となればまた考えが違ってくるのかな?というか、好きな人もいないというのに何を考えてるんだか。

 電車から降りて空を見上げ、あの人のことを思い浮かべた。

「海斗さん、今頃は海の上かなぁ」

 たった2日しかいなかったのに、海斗さんたちと過ごした2日間は濃密で、また行きたくなる場所になっているのは確かだった。

 初めて和室で会った時は口数も少なくてそっけない態度だったけれど、落ち込む私に夜の海の景色を見せてくれた海斗さんの優しさが今でも胸に残っている。

 今度助けてくれたお礼をしたいし、今回私が書くことになっている季刊の特集のページを読んでもらいたいなぁ。

 海斗さんだけじゃなく、ヒデ子婆ちゃんやヨシハラのお爺さんにもだし、こんなにも誰かに自分が書いた記事を読んでもらいたいって思えたのは初めてかもしれない。

 それはファッション部では感じたことのない思いで、タウン情報部に来てからだ。

 これからも何度か宇ノ島エリアに取材へ行くことが増えるのだから、取材の帰りにでも漁港か自宅のほうに立ち寄ってお礼を伝えてみようかな。
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