イジワル御曹司に愛されています
あの日の続き
「なんだ、その歩き方」

「さっき階段踏み外して…」


ひょこひょこと片足を引きずって受付ロビーに現れた私を見て、都筑くんが目を丸くした。

どうやら確実に右足首を痛めた。パンプスの重みですらつらい。


「先に言えよ、それで外なんか出ちゃダメだろ」

「え…でも、行くよ」

「バカ言うな。会議室どこかある?」


今日は以前言っていたとおり、どこか喫茶店で打ち合わせしようと誘われていたのだ。実はそれなりに楽しみにしていた私は、しょげた。


「ケーキを食べようと思って、ランチのデザート抜いたのに…」

「そんな無駄な計画性発揮するくらいなら、まず転ぶな」


はい…。

受付さんにお願いして、あいている会議室を押さえてもらう。うう、痛い。

会議室までよたよたと移動する間、都筑くんがいつでも手を貸せる距離にいてくれているのがわかった。心配半分、あきれ半分の顔で、時折私がよろけると、はっと手を出しかける。

ようやく会議室の椅子に座ったときは、お互い深く安堵の息をついた。


「これ、見たよ。社内でも確認した。よく仕上がってると思う」

「ほんと」


私の送った計画書の出力を見せながら、都筑くんが言う。


「合格?」

「うん、あとはもう、ひたすら作り込みだな。あと備品の手配。会場が貸すものとうちが貸すものは別だから、サイトでしっかりチェックして」


やった、先に進める!

ぱっと晴れた私の顔を見てか、彼も目を細める。いきなりそんな優しげな表情を見せられて、私は動揺した。


「代理店に丸投げのところが多いのに、よく自力でここまでできたよ。相当中身の濃い展示になってると思うぜ」

「丸投げする財力があれば、したんだけど」

「次があったら、手伝ってもらうのも検討してみたらいい。自分でやったことあるのとないのじゃ、丸投げの質も全然変わるだろ」


計画書に目を走らせながら、そう言ってくれる。
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