Tower of Fantasy
危機、迫る

サーラの旅

『え、え、え、え、縁談ー？！』


突然聞こえてきたサーラの悲鳴に、旅の話をしていたアレフ、リューロ、ルイス、アクアの4人は飛び上がった。


『静かにおし！いい加減、野蛮なことはやめて家に入ってもよろしいでしょう！お前はもう十分我儘をしてきたではないの！』


『や…野蛮ですって？！いくらおばあさまでも酷いわ！』


『野蛮以外の何物でもないではないの！女の子がするようなことではない！はしたない！』


『な…！』


『サリスティー！あなたはセレスディア家の跡取りなのよ！』


『セレスディア家のことなんて知らないわ！勝手に滅びればいいじゃないの！』


『何てことを…！』


バァーン！


扉を叩きつけるような音に、再び4人は飛び上がった。

そしてドカドカと乱暴な足音が段々近づいてきて、リューロたちの部屋の前で止まった。

そして上品なノックとともに、悲鳴と怒鳴り合いの原因の1人・サーラが入ってきた。

彼女は引きつった微笑みを浮かべながら、しずしずと慣れたように長いドレスを軽く引っ張って部屋に入れ、部屋の扉を静かに閉めた。

シンとしているリューロたちを見て、サーラは自分の声がここにまで響いていたことを悟った。


「あー…お見苦しいところをお見せ…お聞かせ？…してしまい、申し訳ありません…」


サーラは、おばあさまが呼んでいらっしゃいますとメイドに伝えられて不機嫌そうに部屋を出て行った時と違って、少し肩で息をしていた。そして、頰も紅潮していた。


「サリスティー=グローシア=セレスディア…か」


ルイスがそう呟くと、サーラは不機嫌そうにジロッと彼を睨んだ。


「…何よ」


「いや…別人みたいだなーって。俺からしたらサリスティーじゃなくてサーラだから…」


「別人よ…私はサリスティーなんかじゃないわ。私はサーラよ」


「サーラ？サリスティーっていう名前は、君のおばあさまがつけてくださった名前だよ？」


「…私、お父さんがつけてくれたサーラのほうが好き。サリスティーなんて、長ったらしくて、ダサいわ」


「…しょうがないねぇ」


アレフは優しくそう言うと、そっと合わぬ間に背が高くなったサーラの頭を撫でた。
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