男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
おかしな三角関係に

◇◇◇

剣術大会から十日ほど過ぎたある日のこと。

朝食の焼き立てのパンに、実家ではたまにしか出してもらえなかった贅沢品のジャムをたっぷり乗せて口に運ぶ。

卵に生ハムに、あさりのチャウダー。

食べながら考えていることは、『最高に美味しい!』という無邪気な感想ではなく、『朝からこんな贅沢を』という没落貴族らしい戸惑いでもない。

『なぜ私は朝食を、大公家のプライベートルームで食べているのだろう』という疑問だった。


今、私がいるのは、剣術大会のひと月前に晩餐にお呼ばれした部屋。大公一家の肖像画が飾られている部屋だ。

女だとバレてしまった後、これからはこの部屋で、朝と晩の食事をするようにと、殿下に命じられていた。

午餐は以前と同じように、他の教育生と一緒に食事をしているが、リリィに呼ばれて私だけ中庭でお茶をすることもあった。


こんなに近くに置いて下さる理由はなんだろう……。

こんな私が、まるで家族のように朝食を共にしているなんて、使用人たちも明らかに戸惑いを顔に浮かべているのに……。



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