男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
邪視騒ぎの終焉に、熟す恋心

◇◇◇

舞踏会から三日後のこと。

午後は剣術の授業で、他の教育生は素振りに励み、私だけはジェフロアさんと木刀を交えていた。

木刀のぶつかり合う音が反響する中庭には、たくさんのコスモスが風になびかれている。

リリィが侍女と一緒に種をまいて育てたコスモスだ。

秋を感じると同時に、城にやって来たときは初夏だったと、過ぎた月日を振り返る。

実際よりも長くここで暮らしている気がするのは、毎日が充実しているせいなのか。

のん気な田舎暮らしを続けていたなら、決して出会えなかったであろう人たちが、ここにいる。

今、稽古をつけてくれているジェフロアさんに、ジャコブやクロードさん。エドガーとリリィと、そして大公殿下……。


殿下の顔を思い出したら、心が急に掻き乱される。

それが腕にも影響し、ジェフロアさんの剣を受け止め切れず、レンガの地面に片膝をついた。


「ステファン、どうした?
実戦で気を抜けば、やられるぞ」


青の騎士団に入団して以降、ジェフロアさんは私への敬語をやめている。

今は彼が上官で、私は部下。

授業中であっても青の衣を纏っている以上、その上下関係を崩してはならず、そのことに私も異存はない。


< 221 / 355 >

この作品をシェア

pagetop