行雲流水 花に嵐
第三章
「大分割れて来たな」

 十日ほど経ってから、要蔵の料理屋の離れで、五人の男が車座になっていた。
 要蔵、配下の駒吉、文吉に、牢人の宗十郎と片桐だ。

「見世自体がそうでかくねぇんで。常時見世にいるのぁ見世を任されてる勝次(かつじ)って男と、亀松の女と、竹・鶴ってぇ二人組の子分の四人でさぁ。まぁ亀松も出入りはしてるようですがね、外にいることのほうが多いようで。大方他にも女がいるんじゃねぇですかね」

 文吉が報告する。

「まぁそれでも、夜にいるのはその程度ってことで。あとは亀松の身辺ですが……。多分それなりの腕利きが常についていると見ていいでしょうね」

「そうだな……。見世を潰しても、亀松を取り逃がしちゃ意味がねぇ。だがこっちは五人だし、全員が全員、武に長けてるわけじゃねぇしな」

 要蔵が顎を撫でる。
 この五人の中で、宗十郎と片桐は腕が立つ。
 文吉も匕首を巧みに操るが、相手が剣の遣い手だと後れを取るだろう。

 駒吉はもっぱら情報収集だ。
 要蔵は柔術を遣うが、真剣を相手に出来るかは微妙だ。

「あちらさんは荒くれ者でしょ? そんなら皆それなりに遣えると思っておいたほうがいいわよぉ」

 部屋の隅でやる気なさげに柱にもたれている片桐が言う。
 白い小袖の着流しに朱鞘の刀を差している。
 長い髪を頭頂で括っており、顔立ちも中性的なのだが、れっきとした男である。
 ……のだが。

「喧嘩慣れしてる輩って、案外侮れないのよね~」

 頬に手を当てて言う。
 その場の空気が、どっと崩れた。
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