クールな御曹司にさらわれました
3.おでかけします



羽前邸にお世話になって三週間が経とうとしている。
私の日常は表向き何も変わっていない。ごくごく普通の会社員生活だ。
ただ、私の着ている通勤服が以前より少々上等になり、使っている化粧品がブランドものになり、普段使わないアイシャドウやルージュが増えただけ。
会社では制服だし、仕事用のメガネをしているので、誰もそんなことには気づかないみたいだけれど。

その実、私の日々はとても忙しい。

まずは父の捜索だ。
三週間ですべての心当たりは当たった。どこでも父を見つけたら、そっと連絡をしてほしい旨を伝えてあるし、ほとんどの人たちが娘で苦労していると類推される私に優しかった。
縁を切ったはずの親戚まで「妙ちゃん、お金に困ってない?何かあったら頼りなさい」と言ってくれた。
ありがとうございます。現時点、生活には困っていないのですが、返すあてのない借金で海外に売られてしまいそうです……なんて言えなかったけど。

さて、父は捜査網にいまだひっかかってこない。
何度も自宅アパートをチェックしたし、ダミーでいつもの茶箪笥にお金を置いておいたりした。しかし、お金がなくなることはなく、父は家にも立ち寄っていないようだ。

本当にどこへ行ってしまったのだろう。もしかして、どこかで死んでしまっていたりして。
想像するとぶるっと身震いをしてしまう。
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