クールな同期と熱愛はじめ
Round5:スイートルームの夜


翌々日の日曜日。
特に予定もなく、なんとはなしに外出する。

十一月に入ったばかりの空気は、すっかり秋の涼やかなものだった。空も澄んでいて気持ちがいい。

あれから桜木くんからの連絡がないところをみると、もうすっかり回復しているんだろう。

マンションを出て左に折れ、駅方向とは反対に歩いていく。
もう少し行くとコピーショップがあるから、そこでカフェラテでも飲もう。
そこで唐突に、桜木くんが言ったことを思い出した。

『ムラムラされても今は抱けない』

“今は”ってなに。あとなら抱くってこと?
いやいや、あり得ないから。

歩きながら頭をブンブン横に振る。
あれは単に私をからかっただけ。そうわかっているのに、本気だったら?なんて考えが過る。
その途端、鼓動が加速度をつけるものだから、慌てて彼のことを頭から追い出した。

そんなことを考えているうちにコーヒーショップへと着いた。ふと、店内入口へのアプローチが目に入る。普段ならそんなところは気にも留めないのに、なんとはなしに足を止めた。
『もっと周りを見た方がいい』と桜木くんから言われた言葉が、ずっと引っかかっていたせいだ。

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