甘えたいお年頃。
第三章 迷惑とは際限なくかけてしまうものである。


春。
あっという間に新学期の始業式が終わり、二年生に進級した。
勿論クラス替えもあり、里菜とクラスが分かれたお陰で、居心地の悪さからは解放されたのだ。
あのまま分かれてしまったことには、深月も多少心残りがあったようだが、もう仕方のないことだ。

私と深月はクラス替えの名簿を見ているところだった。


「私4組だ! 深鶴は?」
「え……2組だけど」
「えー!? バラバラかあ……」
「しょうがないよ、まず理型文型から別々なんだから」


私の学校は二年生から理型と文型でクラスが分かれる。
今年は3組までが理型、4組からは文型なんだそうだ。
2組の名簿を見ていくと、その中に見かけた事がある名前があった。


「深鶴のクラス、あの尚人くんいるね?」
「……うん」


複雑な気持ちが混じる。
嬉しい反面、この間までのゴタゴタのおかげであまり関わりたくない気持ちもあった。
尚人は悪くない事など分かっている。

深月と分かれて教室に入ると、何人かが私の方を一瞬だけ見て、また元に戻った。
特に興味もないのだろう。
席を確認して、窓際の一番後ろの方へ移動した。

何人かとすれ違う度に軽く会釈をする。
彼女たちも適当に返してくれた。



キーンコーンカーンコーン……
朝のHRの時間になった。
入ってきたのは今年担任になるのだろう、眼鏡を掛けた小柄の女性だ。
始業式で姿を見たとき、なんだか安心感を覚えた。
ちなみに今の担任は5組に移動している。


「はい、それでは……」


五十代とは思えないほど元気な甲高い声が日程を告げた。
係、委員会決め、その他諸々……とにかく今日はやることがあるからついて来い(?)ということだろう。


「それじゃあまずは係決めからね」


カッカッと担任が文字を書いていく。
『委員長』、『副委員長』、『記録係』と縦書きにして手は止まった。


「ここまでは先生がまとめるから。他の係と委員会は委員長に任せるよ」


急に周りが騒ぎ始める。
委員長ができる人の見分けがまだついていない私には、ただそれを眺めていることしか出来なかった。

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