イケメンなんか大嫌い
好きだけじゃ済まない

何とか始業に間に合う電車に滑り込んだ。
息を整え、扉の窓の向こうに流れる景色を眺めるも、心臓のドキドキは収まらない。
俊弥が帰ってからわたしも急いで身支度を始めたけれど、しょっちゅう放心してしまいギリギリの電車になってしまった。
揺れる車両の中、ソワソワと落ち着かない心を持て余す。

頭に微かに残る、先程の俊弥の掌の感触を思い起こし、頬を赤らめた。
……いやいや、何ちょっとキュンとしてんの!?
すかさず首を左右に振り、溜息を零す。

あぁ……本当にまずい。

『やってしまった……。助けて梨花~~』

今度は顔を青くしつつ、縋る気持ちで画面に打ち込み、送り付けてしまった。


幸い仕事は忙しく、集中して終えることが出来た。
会社から程近い、ターミナル駅まで出向いてくれた梨花と落ち合う。
今日は水曜日、ノー残業デーの為、定時に上がれるわたしに付き合ってくれた。

「うわぁ……ド修羅場」

駅近のビル内にある半個室の居酒屋の席に着き、粗方の話を聞くなり、表情を歪め呟いた。

「わたし、どうしよう!? どうすれば良かったのかな!?」
「……まぁ、起きてしまったことは今更仕方ないし。俊弥くんのやり方はともかくとして、私は遅かれ早かれこうなるんじゃないかとは思ってたけどね」

両手で顔を抱えるわたしに対し、梨花はシーザーサラダに箸を付けながら、思った程には驚く様子もなく答えた。

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