クールな御曹司にさらわれました
6.溺愛されています



「好きなだけ飲んでくれ、小森くん」

居酒屋のがたがたいう木のテーブルに顔を突き合わせるのは三人。私、小森、そして尊さんだ。小森が頭を掻き掻き、にやっと笑う。

「あざぁす。いやぁ、助かっちゃうなぁ。給料日前で懐寂しいから、飲みにいくのは諦めてたんですよねぇ」

「婚約者の親友をもてなすのは大事な仕事だ。こんなことでよければ、いつでも誘わせてくれ」

小森は恐縮する素振りもなく平常運転だし、尊さんもいつもの無表情で話しているので、この会話はまったくフレンドリーではない。しかし、逆に言えば、双方リラックスしているんだからいいのかな。

気まずく、ちょこんと座っているのが私。
なぜ、三人で会社近くの焼き鳥屋に落ち着いてしまっているのかというと、本日会社帰りに尊さんが迎えに来たからだ。

タマ、食事に行こう。おや、きみはこの前のタマの同期だな。世話になっている礼をしたいな。

なんて、つらつらと喋ると私と小森を有無を言わせず連行したのだ。
近所の焼き鳥屋がいいと提案したのは小森で、いつも私が食べている羽前邸のごはんに憧れている小森のチョイスとは思えない。尊さんなら高級フレンチなんて予約不要で一撃必中なのに。

「ここの焼き鳥はうまいな」

たぶん、こんな庶民的なお店には入ったことがないだろう尊さんが素直にネギ間の串を褒める。

「ああ、ここんちうまいっすよ。真中、いつものつくね頼んだら?」

「あー、うん」
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