日常に、ほんの少しの恋を添えて
プロローグ
「ごめん、別れよう」

 初めて付き合った彼からのお別れ宣告は、社会人になって2カ月目のことだった。
 駅に近いカフェで手元のコーヒーカップを見つめたまま微動だにしない彼。そんな彼を目の前にして私はやや前のめりになり、尋ねる。

「え……あの……理由、聞いてもいい?」

 すると彼は言いにくそうに、私から視線を逸らす。

「……俺の我儘なんだけど、なんか、付き合ってても張り合いがないっていうか、志緒ってイマイチ反応が薄いっていうか……勿論、お前のことは好きで付き合い出したんだけど、思ってたのとちょっと違うっていうか……付き合ってみて分かったんだけど俺はもっと喜怒哀楽がはっきりした子の方が好きで……」

 ――なんだそれ。

 彼の言葉は途中から頭に入ってこなかった。
 同い年の彼は大学で知り合った。何気なく会話を交わすようになり、一緒にいる時間が増え、向こうから付き合わない? って言ってくれた時はうれしかった。すぐOKした。

 初めてのキスも、エッチもしたのに。
 なのになに、その理由。今更そんなこと言われても。

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