日常に、ほんの少しの恋を添えて
御曹司は甘いものが嫌い

藤久良湊という男

 

 私が勤務するのはフジクラリゾート株式会社。
 大企業、藤久良グループに属する我が社は、ホテルその他の宿泊施設の運営管理、併設するレストランやゴルフ場やスキー場などのレジャー施設の運営管理などが主な営みである。

 彼氏に振られるという事件もあり途中モチベーションが著しく下がった時期もあったが、無事三カ月にわたる新入社員研修を終え、配属先が決定する当日。出社するとすごい勢いで同期入社の友人である史華(ふみか)が私のもとに飛んできた。

「ちょ、ちょっと志緒っ!!  辞令見たっ!?」
「えー? まだ今来たばっかりだから見てないけど」

 のんびり鞄をロッカーに入れながら答える私に、まだ息が乱れたままの史華が衝撃の事実を告げる。

「同期の中で、秘書課に配属されたのあんただけなんだけど……!」

 ”ひしょか?”
 頭の中に全く予想していなかった文字が広がる。もちろん希望なんか出してない。
 私は総務に希望を出したはずだ。
 それに秘書課、というと頭に思い浮かべるのは、才色兼備な女性のイメージ。
 有名大学を出たわけでも、見目が特別麗しいわけでもない自分とは縁遠いイメージだったのに。

「史華ったら何言ってんの~~私よりもっと適した人が新入社員にも何人かいたじゃない。そんな人たちを差し置いて私がそんなところに配属になる筈ないわ~~」

 私は史華を見てクスっと笑う。だけど、彼女は驚きの表情のままブンブン頭を左右に振った。
< 4 / 204 >

この作品をシェア

pagetop