冷徹ドクター 秘密の独占愛
身に覚えのない言いがかり



東條歯科医院に勤め始めて初めての週末、土曜日。

今日は仕事後、入ってきた私の歓迎会を開いてくれるということで、病院からほど近い駅前の洋風居酒屋へ訪れている。

平日は二十時までの診療をしているけど、毎週土曜日は十七時に病院を閉める。

今日はラストの患者さんが少し押したけど、十八時前には歓迎会が始まった。


今日の歓迎会はスタッフ主催。

こういう席には院長は顔を出さないらしく、今日の参加者は助手の三人と牧先生、鮎川先生。

それから一応声を掛けたらしく、意外にも副院長も顔を出している。

私の歓迎会とか、きっと微妙なはずなのに、だ。


さっきからずっと難しい顔で先生たちと何やら話し込んでいる副院長は、病院の外ではスーツをビシッと身に纏っている。

他のドクターがラフな私服姿の中、仕事後も一人相変わらずお堅い雰囲気だ。

こうして白衣を脱いだ外での姿を見ると、どこかのエリート商社マンにでも見えてくる。

容姿がいいのがそんなマジックをかけているのだろうけど。


「副院長って、飲まない人なの?」


となりに座っている中田さんにこっそりと聞いてみる。

会が始まってから、みんな各々にお酒を注文しているけど、副院長だけはアルコールを飲んでいない様子。

サワーに入れるグレープフルーツを絞っていた中田さんはその手を止め、私へと顔を寄せた。

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