君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
5.憧れと現実
昔から、あの絵本を読むのが好きだった。
ただ面白いからという理由だけじゃなくて、純粋に絵本の世界に憧れていたんだと思う。

そしていつしか、絵本に出てくる救世主を追い求めるようになっていた。
自分一人では、リンタールを変えられないと知ったから。

しかし、誰に話しても絵本のことなんだからと流されるだけだった。
だから、次第に自分の中だけで信じるようになった。

本当は、自分でもおかしな話だとわかっている。
だけど、唯一の望みを手放すことなどできなかった。

僕がまだ鏡の部屋に救世主が現れると信じていると知っているのは、護衛のシンくらい。

シンとは物心ついた時からの仲で、何でも話せる貴重な存在だ。
いつも聞き流されている感は否めないが。

それに、シンには良く、僕の考えは手に取るようにわかると言われる。
僕から見ると、シンはどこか掴み所のない性格をしてるように見えるというのに。

この差はなんなんだろうか。
でも、そんな関係性が良かったりもする。
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