ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
2: 記憶の在処


それから数日が経って、私は学校帰りの放課後に詩月の家に行くことになった。

詩月本人からは相変わらずなにも読み取れないし、まずはおばあちゃんの私物に触れて記憶に関する思念がないか試すことにしたからだ。

「どうぞ」

詩月の自宅は古風な一軒家だった。


広い庭に立派な松の木が生えていて、玄関までの道筋には丸い小石が敷き詰められている。

大きな車庫の中には軽トラックと稲刈り機。そしてお宝でも眠っていそうな土壁の蔵(くら)のようなものまであるから驚きだ。

「今は使ってないものばっかりだよ。庭も荒れ放題だし」なんて詩月は笑いながら、私を家の中に入れてくれた。


「……うわ」

外もすごければ当然家の中も豪華で。

玄関の正面には博物館かと思うほど立派な甲冑を着た武士の置物や高そうな掛け軸や美術品が飾られていた。

……詩月の家ってもしかしてすごいお金持ちなのかな。


長い廊下を進むと襖の向こうに和室があって「ちょっとここで待ってて」と詩月はなにかを取りに行った。

とりあえず座ってみたものの、広すぎて落ち着かない。

木彫りの欄間(らんま)には桜が彫刻されていて、
どこを切り取っても豪華というか、まさか詩月がこんな家に住んでるなんて想像してなかった。
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