ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
3: こころの扉


週明けの月曜日。あと1週間で夏休みということで今日は朝から大掃除。掃除場所は黒板に振り分けられていて【羽柴 教室】と書かれていた。

こんな暑い中、外じゃないことが幸いだけど面倒なことには変わらない。


「羽柴さん。窓拭いてくれる?私たちこっちやるからさ」

机と椅子は全て廊下に出して、私と同じく教室に振り分けられたクラスメイトが教壇の前で談笑していた。

ただ形として持ってるだけのホウキと塵取り。

面倒な窓拭きは話し相手がいない私がやるべきだと言わんばかりの態度。私はため息をついてバケツに水を入れた。

中庭では上級生たちが遊びながらごみ袋を運んでいて、その楽しそうな声がここまで聞こえてくる。

みんな青春を謳歌してるって感じ。きっと特殊なのは私のほう。


「おーい詩月!詩月はいるか?」

相変わらず担任は声が大きい。

「先生どうしたのー?詩月はいないよ」

さっきまで話し込んでいた女子たちは担任が来た途端に掃除をしているふり。


「あいつ掃除場所に来ないんだよ!」

「だって詩月って東側のトイレでしょ?あそこめちゃくちゃ汚いし誰だって逃げたくなるよー」

「逃げられちゃ困るんだよ」

結局、担任は別の場所を探しにいった。


「詩月どこでサボってんのかな?私たちも誘ってくれたらいいのに」

「ね!ってか詩月ってけっこうミステリアスなところあるよね。家とか遊びに行かせてくれないし、自分のことあんまり喋んないじゃん?」

「あーでもそこがいいんだよ。ただのバカな男子とは違うっていうか……」

「たしかに!」

こんなに噂をされてたら今頃詩月はくしゃみでもしてるんじゃないかな。本人がいてもいなくても詩月のことを悪く言う人はひとりもいない。

一体どれだけの愛想を振り撒いたらこんなに絶賛されるんだろう。


【暇なら放送室にきて】

ポケットの中でスマホがバイブしてると思ったら、そんなメールが届いていた。

ミステリアス?どこが?

普通にちょっとワガママで強引でみんなが掃除してる中、放送室で暇してるようなヤツだよ。
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