キミは甘のじゃく
8.いってらっしゃいのキスをして

あれは、そう……委員会活動が終わり、教室まで荷物を取りに行った放課後の教室だった。

「お前、市村のことが好きなのか?」

古賀くんに挨拶や業務連絡以外で話しかけられたのは、多分初めてのことだったと思う。

突然話しかけられたことも、その内容も意味がわからなくて、私は目をパチクリさせて古賀くんに聞き返したのだった。

「市村くん?」

「そうだよ、市村だよ」

古賀くんは不機嫌そうに眉を顰めると、私と彼との間を塞いでいた机を脚で蹴り避けズカズカとこちらに歩み寄ってきた。

聞かれたことに心当たりがないと言ったら嘘になる。


(もしかして……あれかな?)

昼休みに友達と好みの男の子のタイプを話してた時に“真面目で物腰の柔らかい人”って言ったら“市村くんみたいだねー”なんてからかわれたのが変に広まってしまったのだろうか?

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