キミは甘のじゃく
9.男は狼なのよ

一緒に暮らし出して数日が経ったある日のことだった。

「……やる」

いつものように帰宅した古賀くんはカバンと一緒に、洋菓子と思しき白い紙箱を私に渡してきた。

「これ、どうしたの……?」

「会社の近くで売ってた」

古賀くんは素っ気なくそう言うと、おかえりのキスをチュっと頬にしてきた。

「……ありがとう」

彼がお風呂に入っている間に中身を確認すると、シュークリームが入っていた。

あまりに美味しそうで我慢できずにひとつだけ味見する。

(美味しい!!)

ふわふわのシューとクリームがベストマッチしていて、いくらでも食べられそうだ。

古賀くんは甘い物が苦手だそうなので、私が食べるしかないんだけど。

(さすがに10個は多いよね……)

買ってきてもらって食べない訳にはいかず体重増加を覚悟しげんなりしていると、ある名案が思い浮かぶ。

(かすみのところに持って行こう!!)

ちょうどかすみと双葉くんのアパートに遊びに行こうと思っていたところだったのだ。

私が古賀くんと暮らし始めるのと時を同じくして、かすみも双葉くんのアパートに居を移していたのだった。

手土産に持って行く分と自分で食べ切る分を取り分け、残りは冷凍庫で保存することにした。

でも、なんでいきなりシュークリームなんて買ってきたんだろう?

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