過保護な騎士団長の絶対愛
ルビカサイトの奇跡
 コルビス王国から南へ馬を走らせ、適当な太さの木に馬をつなげるとユリウスは目深にかぶっていたフードを取り払った。


 ここか――。

 コルビスを出て約三日。ユリウスはひとり、目の前に立ちそびえるシェリアの城を見上げた。

 今夜は朧月で煌々とした月明かりはない。城へ潜り込むには好都合だった。それに加えて今にも夜雨が降りそうな湿気を含んだ空気が漂っている。

 モリスにコルビスの兵を引き連れていくように言われたが、シェリア王国の兵力がどんなものか予測がつかない以上、シェリアの出方を窺った方が良策と考えた。それに、単独行動の方が融通が利く。

 木々の葉が風に擦れると同時に、灰色の分厚い雲が夜空を覆いつくしていくと、しとしとと雨が降り出した。

 ララ様――。

 きっと、助け出してみせる――。

 ユリウスは、目の前にそびえ立つシェリアの城を睨みあげた。
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