結婚適齢期症候群
3章 自分にふさわしい相手
お昼休み。

マキが一枚のチラシを持ってきた。

「これ、うちのビルの3階のカルチャーセンターで見つけたの。」

「何?」

「陶芸。」

「陶芸?」

「マキってそんな趣味あったっけ?」

「まぁねぇ。今まではなかったけど、今はあるの。」

「なにそれ。」

マキは少し意味深なほほえみを浮かべた。

「この陶芸の講師がさー、すごく渋くて格好いいんだって。」

「もう男はいいんじゃなかったっけ?」

「渋い講師はおまけよ。あくまでおまけ。ほら、将来年取るまで続けられる趣味って大切だと思わない?」

マキはとにかく突飛な提案をしてくることが多かった。

何度となく、そういう類の将来に繋がる趣味だとかキャリアだとか言われて、大抵一回こっきりになるセミナーなんかに付き合わされていた。

今回もきっとその類。

普段、色んな面で助けてもらってるマキのお願いだから、嫌とは言えない。

「そうね。行ってみる?」

「やった!」

マキは年甲斐もなく、無邪気に万歳をして喜んだ。

こういうのがほっとけない男達は、きっと多数いるんだろう。

私にはそういうほっとけないっていう女性としてチャーミングな部分を持ち合わせていないから、マキが本当に羨ましい。

「で、いつあるの?その陶芸教室。」

「ほら、来週の木曜の18時。チサはいける?」

鞄から手帳を出してめくる。

相変わらず、予定のない手帳。

タカシと別れてからはほぼ何もかき込まれていなかった。

「うん、大丈夫。」

「じゃ、二名で予約入れておくね。」

「さんきゅ。よろしく。」

マキはウキウキしながら、自分の手帳にも書き込んだ。

陶芸ねぇ。

昔、小学校の野外活動の一環でそんなのあったような気がする。

造形ものは、絵を描くよりは得意だったような。
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