はちみつドロップス
膨らんでいく想い

その日の皇楽は、月に一度のサービスデイで忙しいにも関わらず完全に浮かれていた。



「お待たせしました。ガトーショコラですっ」


「あ、ありがとうございますぅ」




その証拠に。
客商売であるバイト先でも構わず常に仏頂面の皇楽が、注文されたガトーショコラを差し出したその顔に微笑みを浮かべたりしているもんだから周りは気が気じゃなかった。



ガトーショコラを受け取った女性客とその友人と思しき女性客は、完全に皇楽の微笑みに心を奪われている。



「……高原が笑顔で接客してる」



それを終始眺めていた天の顔がややひきつっていた。



天変地異の前触れか。
そう思わずにはいられないくらいに皇楽の笑顔は爽やかだった。



「皇楽ッ!! やっとボクの言葉に耳を傾けてくれたんだねっ!!」



皇楽と顔を合わせる度に笑顔を求めては無視され続けていた店長すらも、



「邪魔ッス」



今日ばかりは笑顔で無視されている始末。



皇楽の笑顔に体をクネクネさせる店長を視界から消し、



「……やっぱり高原おかしくない? 熱でもあるんじゃ……」



天は隣に控えていた慶斗に、更に顔をひきつらせながら不安を訴え続けている。


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