【SR】だるまさんが転んだ
第一章
ブラインドタッチの、カタカタとキーボードを叩く音。


ファックスの動く音に、滑らかなボールペンを滑らせる音。


低姿勢で電話をかけ、取材を申し込んでいる若い記者の声。


それらの音は鼓膜から入ってくるが、俊介が気にする事は無かった。


そして、それらの音を発している者達も、俊介を気にする事は無かった。


十一時過ぎに出社してきて、途中で買ってきた雑誌を読みふける。


一応、名目上は朝一から取材となっていたが、煎餅布団から起きたのは十時頃だ。


この場になど、居ても居なくても関係ない。


ホワイトボードに書かれた川崎の名前の横に、取材直帰と書けば帰っても良いのだ。


楽な会社だ、と心の中で呟いた後に、こんな自分にしたのもこの会社だがなと付け足した。
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