【SR】だるまさんが転んだ
第三章
「チャオミンは言葉を話せない。」


向けられた銃口から聞こえてきたような声は、冷たさを感じるほどに平板だった。


そして、その言葉に付け足すように、銃口を更に強く押し付けられた。


決して後ろを振り返ってはならないと、本能が俊介に命じる。


「チャオミンは売り物じゃない。」


売り物という言葉に、俊介は全てを察した。


自分でも、この少女を一目見た時に思った事だ。


「ちょっと待ってくれ。俺はそんなつもりじゃなかったんだ。この子を売り物だなんて見てはいなかった。」


俊介も、銃口を向けられたのはこれが始めてではなかった。


もう十年以上前に、大物政治家の裏金を追おうとした時、拉致され銃口を向けられた事があった。


目と口をガムテープで塞がれたが、耳から聞こえてくる口振りで、相手は政治家が雇ったヤクザ者だと悟った。
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