「ママ」のこと




翌朝の空は、昨日の雨は嘘だとでも言うかのように晴れ渡っていた。



梅雨の時期特有のジメジメした感じもあまりなく、カラッとしている気がする。



もうすぐ、梅雨明け宣言が出されるだろう。



なんてすがすがしい朝。



それなのに私は寝不足で、まるで徹夜明けの受験生のように目がギンギンだ。



私はとにかく健康体なので、今まで入院なんてしたことがないから、昨夜は準備にかなり手間取った。



何が必要なのかが、わからない。



病院でもらった【入院手続きをされた方へ】という紙を見ながら、ひとつずつ揃えてみる。



え、洗面器?



うちはいつもシャワーだけだし、洗面器なんてないよ。



そうだ、百円均一の店…ああ、もう閉まってるわ。



明日の朝買いに行けばいいか。



ええと、あとは…―



【持ち物にはすべて名前を書いてください】



…?!



め、めんどくさい。



ていうか、油性ペンがない。



…全然ダメだ。





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