海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
【第7章】

長い時を越えて

――――…

「はぁ…。」

自宅でテキストに目を通していた私の心中は、いつまでもザワついていた。


いくら気持ちを切り替えようとしても、これから待ち受けている事ばかりが気になって、なかなか集中出来ない。


「どうしよう…。」

今まで心の中で言っていた独り言が、自然と言葉となって口から零れていた。



母校への出向についての話しがあった数日後、


「来週の金曜日、君の母校に行くからね。そのつもりで。」

と、教室長から言われた。


“来週の金曜日”なんて、あっという間にやってくるに違いなくて。

その日が一日、一日と迫るにつれて、私の気持ちは焦るばかりだった。


『来週、相葉先生に会うんだ。』

『相葉先生は、今の私を見てどう思うだろう。』


そんな風に考えただけで、私の心は上がったり下がったりしていたし、とにかく相葉先生に会う事が、怖くて、不安で、仕方がなかった。



こんなにも不安に感じる一番の理由は、

『再会して、相葉先生への想いが蘇えってしまったらどうしよう。』

と、いうことだ。


そう思ってしまう程、私の心の中から相葉先生の存在が消える事がなかったから。

だけどその反面、


『相葉先生は結婚しているのだから、自分の恋愛対象にはならない。』

と、現実を冷静に見つめ直していたり。


“もしかしたら自分はどうかしてしまったのではないか”と感じる程、刻一刻と考えや気持ちが変わっていった。
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