ケータイ恋愛小説家
ありえない小説
「これ……あたしの小説……です」


あたしは神妙な面持ちで、蓮君に携帯を差し出す。


「んー」


連君はあたしから携帯を受け取ると、時々親指を動かしながら画面をじっと見つめている。



例のコンパから二日後の日曜日の昼下がり。

あたしは今、蓮君と一緒に駅前のカフェにいる。


あたしの小説のために、男性の心理や行動について教えてくれることになった蓮君。

まずはどんな小説を書いているか知りたいと言うので、とりあえず読んでもらうことにした。


あたしは緊張しながら蓮君の様子をじっと眺めている。

読み始めてから時間が経つにつれ、蓮君の表情は険しくなっていく。

眉間に皺が寄る。

気のせいかその皺がどんどん深くなっているような……。


そして……。


「……アホらしっ」


そう言うと携帯をテーブルに置いてそのままあたしの方へシュッと滑らせた。


あわあわあわっ


なんてことを!

あたしは勢い余ってテーブルから落ちそうになった携帯を慌ててキャッチした。


「ありえねー」


そうつぶやいて軽く頭を振ると、蓮君は目の前のアイスコーヒーを飲み始めた。


「なっ……」
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