戦国遊戯

エピローグ

不思議なもので、あれだけ日本中の話題をさらっていた、あの、失踪事件も、数ヶ月の時のうちに、大物女優の不倫スキャンダルや、政治家の汚職事件ですっかり姿を消してしまっていた。

「おはよう、希美」

いままでと変わらない学校生活。
最初は、学校内で玲子のことをあれこれ邪推する人たちも居たが、今ではすっかり元通りになっていた。

「おはよう、れいちゃん」

今日は1学期の最終日。
明日からは夏休みが始まる。

「時間がたつのってあっという間だねー」

希美がしみじみ語ると、玲子は笑った。

「そうだ、希美。ちょっと報告があるんだけど」

そう言うと、希美は首を傾げた。

「なに？」

「うん、終業式終わったら、時間いい？」

玲子が嬉しそうに言ってくるので、希美は不思議そうな顔をして、いいよ、と頷いた。


「えー、ではみなさん。くれぐれも、羽目をはずさないように。では、良い夏休みを」


長い校長の話も終わり、終業式が終わった。
玲子は希美を連れて、玲子の家へと急いだ。希美は帰りの道すがら、あれこれと、玲子の話の内容について聞いてくるが、どれも違うと言われ、ずっと首を傾けたままだった。

「驚かないで聞いてね？」

玲子の言葉に、希美はとりあえず頷いた。玲子は頬を赤らめながら、嬉しそうに、1冊の手帳を希美に渡した。

「ぼ……母子手帳!?」

手帳には玲子の名前が書かれている。驚く希美に、玲子は少し恥ずかしそうに、照れながら頷いた。

「ど、どういうこと!?」

何度も手帳と玲子の顔を交互に見る。希美は目が点になっていた。

「えへへ…ゆっきーの子供。できちゃった」