パセリな彼女がついた嘘
ナイモノネダリ
残業をしているとケータイが震えた。

『あ悦司?いまどこ?ちょっとつきあえよ』

通話ボタンを押して僕が何か言葉を発する前に一気に言われた。

「会社だけど、なんだよ」

『たまには二人で飲もうかと』

電話の相手、須藤は既に少し酔っていた。

きりもよかったのでデスクを片付けてPCの電源を落とし、
指定された駅近くのチェーンの居酒屋に向かった。

風は日に日に冷たくなっていて、空を見上げると、
ネオンに負けじと輝く丸々と太った上弦の月が浮かんでいた。

街を行く女性たちは既に薄手のコートやマフラーをつけていたり、
ファーをあしらったブーツも多く見かけた。

僕が鼻で大きく息をすいこむと、
乾燥した空気に奥のほうがツンとした。

できるだけ肺にためこんで
口からゆっくりと息を吐くと少し白くなった。


僕は、冬がけっこう好きなのかもしれない。
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