オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
黒猫とナギと力と

草の擦れる音は絶え間なく流れるが、激しい雨音にかき消されていた。


冷たく激しい雨は小さな身体を容赦なく打ち、重く強ばるそれの体温を奪い冷やしてゆく。


それでも、小さな身体は走りつづけねばならなかった。


あの人のために。


足の裏に鋭い痛みが走った。


何かが刺さったのかもしれない。


それでも、傷を手当している時間など惜しみ、小さな身体は再び疾走する。


大切なモノを、届けなければいけないから。


茨で身体じゅうにひっかき傷が出来るが、そんな事は少しも構わない。


あの人のことを考えれば。


これを持ってゆけば、きっと喜んでくれるはずだから。


あの人が居るはずの場所にたどり着く通過点、大きな獅子岩が見えたとき、彼は安堵した。


これで、彼にコレを。


そう考えた瞬間だった。


頭に鈍い痛みが走り、それが絶え間なく繰り返される。


彼はそれでも


あの人に届けなければいけないと思ったモノは


決して離すことはなかった。
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