グリンダムの王族
第2章

リズの涙

その日、ファラント一行は帰途についた。
リズは役目を終えたということでまた後宮の部屋に戻されており、見送りには出ていなかった。

挨拶を交わす宰相の隣でクリス王子は一言も口をきかなかった。
ただ人形のように誘導されるまま馬車に乗り、あっけなく去って行った。

ファラントの馬車を見送った後、ラルフはカインとセシルに捕まえられた。

「ちょっとあれ誰なの??説明してよ!」

セシルの言葉にラルフはふっと微笑むと、「アランのお手柄だ」と言った。

セシルはその言葉に意外そうに目を丸くした。

「あの王子、グリンダムで女あさってたのか??」

カインが笑みを浮かべながら言った。
彼にはあの少女の意味するところが、薄々分かっていた。

ラルフはちょっと笑うと、「本人は真剣だったようだ」と言いながら自分の首に手をやり、服の下から金色の首飾りを取り出した。

カインとセシルがそれをじっと見る。

「ファラント王家の紋章だ」

ラルフの短い説明に、2人は同時に固まった。

「それって、、、」

「クリス王子から、あの少女への贈り物らしい」

セシルは即座に、「バカじゃない?!」と声をあげた。
カインもあきれたようにちょっと笑った。

「返さなかったんだ」

ラルフは首飾りを服の下に戻しながら、「婚儀が完了するまで預かっておく」と言った。

カインはその言葉に笑みを浮かべると、「、、、じゃ、あの子はどうする?」と聞いた。

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