私立秀麗華美学園
3章:言葉にできないこの思い
それからというもの、俺の勉強ぶりはすごかた。

起床は6時。1時間の勉強の後、授業に備え脳の活性化のため散歩。栄養バランスばっちりの朝食。
授業では居眠りなど言語道断。一言も聞き漏らすまいと教師の話に耳を傾け、人間業とは思えないスピードでノートをとり、寮に帰ると復習と問題集漬けの日々……。


……なんて言えたらいいのにな。
そう現実は甘くない。

確かに予定は6時起床。7時半の時点で起きているのは雄吾だけ。
授業くらい聞こうと思っても、誰の陰謀か強烈な睡魔が襲って来るわけで。


そんな毎日が続き、なんやかんやでテストまで1週間をきってしまった。


「……だからあっ! それはこっちだって!」


ついにゆうかに怒鳴られた。
1週間をきりさすがに焦って来た俺は、プライドをかなぐり捨てゆうかにも助けを求めたのだった。


「食堂で怒鳴んなよー」

「誰が怒鳴らせてると思ってるの!?」


最近は夕食後に4人で勉強するのが日課になっている。
つまりここのところ毎晩ハートスペード寮の食堂から怒声が響いているというわけ。


「今まで和人にばかり気をとられていたが、咲も相当だな……」


雄吾は咲が解き終わった問題集を見て言った。


「あたしそんな頭悪ないもん! この学園が異常なんやん!」

「そりゃしょーがねーだろ」

「大体なあ、家継いだりするにしたって、世界史知ってて何の得になんの!?」


出た。咲の逆切れ。テストのたびに聞いている気がする。


「お前はやればできるだろ。頑張れよ」

「……はあーい」


咲はぎゃあぎゃあ言うわりに雄吾の言葉に弱い。


「なあなあゆうか、俺にも言って」

「何をよ」

「やればできるんだからって」

「やろうともしない和人に言ってもしょうがないじゃない」

「嘘も方便なんだろ?」

「なんか、違う」


わかってないなあ。男なんて好きなやつの一言でどうにだってなんのに。


「ごちゃごちゃ言ってないで、2人とも間違えたとこやり直し!」

「「はーい……」」


好きなやつの一言でどうにだって……。
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