君を愛す ただ君を……
人の目と恋心
「ひゃあっ」

あたしはベンチに座って、大ちゃんがぐちゃぐちゃに放り投げたスコアブックを丁寧にしまっていると、首筋に温かいモノがあたって大きな声をあげた

振り返ると、汗だくの越智君が、ホットレモンのぺッドボトルを持ってにっこりと笑って立っていた

「タオル、ちょうだい」

越智君が、ジャージの上着をあたしの肩にかけると、手を出してきた

あたしはベンチの下に置いてある白いタオルを手渡した

「はい、これ、あげる」

越智君が、ホットレモンのペットボトルをあたしの膝の上に置いた

「え?」

「寒いでしょ。飲んで、温まってよ」

『うわあ…もうイチャついてるよ』
『笹原さんと別れたからって、ちょっと堂々とし過ぎてない?』

フェンスの向こうから、女子の声が聞こえてきた

あたしの肩がびくっと反応すると、声のしたほうに目を向けた

『きゃ、睨まれたぁ』
『あたしの越智君を取らないで…とか思ってるんだよ』
『人の彼氏を奪っておいて、失礼な女よネエ』

睨んで…ないのに

あたしは下を向くと、スカートをぎゅっと掴んだ

「気にするな」

越智君の手があたしの肩にそっと触れた

「涼宮が悪いんじゃない」

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