ラブリーホーム*先生の青③
♯3





あのフライパンの夜から3日目



悔しいから
Newケータイは
最新の防水モデル


お風呂でワンセグ
楽しめますみたいな?


キレた女房に
水攻めされても
くたばらねーぞみたいな?



オレの腕のアザは
まだまだ消えないし、
イチの怒りも
まだまだ消えない



学校からの帰り
マンションの階段を登る
右手にはイチお嬢様の大好きな
隣町のケーキ屋「ノエル」の箱



昨日はミスド
その前はモス
(食べてくれなかったけど)



お弁当も作ってくれないし
貢ぎ物を用意するのも
小遣いもピンチ



機嫌直してくれないかなぁ







「たっだいまー!」


出迎えはないと
わかっていても
玄関でデカイ声を上げてみる



シーンとした玄関
やはり、まだ怒ってんのか


そう、うなだれたオレの元に



「ぱっぱぁ」



天使のような声と共に
リビングから
トコトコやってくる
天使のような我が子



「ぱっぱぁ」




「せぇーはぁぁー!」



ケーキの箱を
靴箱の上におき


いつまでも
ネチネチいじけた母の代わりに
父を出迎える
健気な息子を抱き上げた




「青波、ただいま」


むちゅーっと
ぷっくぷくの頬に
キスをすると



「ちゃあーま」


よだれでテカテカの唇で
「ただいま」と微笑む



「青波は『おかえり』って
言うんだよ~」



「ちぇーは、おっかー?」



「そぉだよ~
青波は可愛いなぁ」


よしっ!
このまま青波を抱っこして
イチに話しかけるぞ


青波の全身から溢れる
癒しのオーラに
下らない怒りも消えるだろう





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