桜の下で ~幕末純愛~
夏の日差しが照りつけ、ジメジメとする蒸し暑さに桜夜は目を開けた。

地面に尻を付け、桜の木に凭れ掛かっている自分に気付く。

ここ…は?

目の前には数年前に見た自分の家。

ああ…。戻ってしまった…。

再び涙が頬を伝う。

総司…離れないって言ったじゃない。笑って頷いてくれたじゃない。

守り抜くって約束してくれたのに…。

どうして私を帰したの?

私を一人にしないで…。

どれだけ座りながら泣いていたのか、門を開ける音がした。

「ただいまぁ~。って誰もいねぇか」

この声…哲?ただいま??

桜夜は座ったままぼんやりと考える。

幕末で過ごした四年…こっちでは何年経ってるんだろう…。

渇れることを知らない涙は流れ落ちたまま。

しかし動く気にもなれず、ただ少し遠くから聞こえる音だけを聞いていた。

足音がリビングに入った事が分かった。

閉めきられた窓が開け放たれる。

桜夜はまだ泣きながら涙で霞む窓を見ていた。

「桜夜?!桜夜っっ!」

哲也が桜夜の姿を見つけ、慌てて駆け出してくる。

哲…制服?

「おいっ。桜夜っ」

哲也は桜夜の肩を掴んで体を揺する。

触らないでよ…総司の温もりが消えちゃうじゃない…。

「無事でよかった。お帰り…でいいんだよな?」

いくら呼び掛けても涙を流したまま反応しない桜夜を見て、哲也は不安そうに言った。

待ってたんだ…。そうか…心配してくれてたんだね。

「多分あってると思う」

今は素直にただいまなんて言えないんだ…ごめん。

ボソッと桜夜が呟いた。

「家に入らないのか?お前の家じゃんか」

私の家?…そうだよ…ね?

桜夜は立ち上がる。

着物の裾を少し直すと開け放たれていた窓からリビングへと入った。

約四年半振りの未来。

懐かしくも感じたが沖田が居ないという現実を突き付けられた様で胸が締め付けられた。

「とりあえず座れよ。コーヒーでも入れるか?」

哲也がソファーを指して言った。

ああ…そうだ…ここにはコーヒーもプリンも総司の好きなシュークリームもあるんだ…。

「…いらない」

桜夜はストンとソファーに座った。
< 216 / 234 >

この作品をシェア

pagetop