約束
第八章 従兄弟
 彼と暮らすようになって一ヶ月が経った。木原君の両親は少し前に引っ越しをしていた。木原君は家まで顔を出すくらいで、駅まで見送ることはしなかった。

それは彼の両親がそう望んだからだ。息子によけな負担をかけたくなかったのだろう。

 私と木原君の関係は大きく変わることはない。だが、最初はなれることなどないと想っていたのに、人というのは不思議なもので、いつの間にか彼との生活になれてきていた。朝起きて、話をすることも平気になっていた。

 その間、彼について知ったことは彼はよく勉強をしているということだ。

テレビはほとんど見ないようで、見るとしても夜にあるニュースをちょっと見る程度だった。新聞にも目を通すが五分くらいで読み終わってしまっている。

 登下校が一緒になったため、木原君の姿を窓辺から見送ることはなくなったが、新しい日課ができた。

それは一日一時間だが、木原君の部屋で勉強を教えてもらうことだ。

 今までなかなか続けられなかったことが一ヶ月以上も続けられたというのは、木原君が教えてくれるのが大きかったのだろう。彼にこの前教えたのにと呆れられないためにも、復習もしっかりする。

 勉強に関しては不純な動機ではあるが、やっていることには変わりないのだからいいのではないかと思っていた。
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