僕らのままで
どきどきする──Side 涼
*side 涼*

 波流は、何も喋らない。

 沈黙の時間だけが、ゆるやかに流れていく。


 ───僕の心のなかは、不思議と安らかだった。

 波流と、こうして一緒にいられることが、幸せだった。

 ずっと、彼女のことを想ってきた。高校1年の時、初めて出会ってから、ずっと。

 でも、想いを伝えることは出来なかった。

 …僕が、臆病だからだ。

 想いを伝えたとき、波流に拒絶されるかもしれないことが、怖かった。

 友達のままでいい。

 …そう思った。

 友達のままなら、気兼ね無く一緒にいられる。

 一緒に笑っていられる。

 だから、僕は自分の気持ちを包み隠した。

 自分の本当の気持ちを顕にしたら、波流に嫌われてしまうかもしれない。

 それが、怖かった。


 でも、今。


 僕は、究極の崖っ淵にいる───。


 このままストレートに、想いを伝えるべきか。
 それとも、友達のままでいるべきか。

 正直、どちらを選んだとしても、後悔してしまいそうな気がする。


 …どうしたらいいんだろうか…。

 迷いに、キリはない。

 不甲斐ない自分に、本当に腹が立つ。
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